睡眠コラム 第2章~大切なのは最初の90分?

1章では睡眠の目的について書きました。もう少し平たく言うと、明日のパフォーマンスは今晩の睡眠にかかっているとも言えますから、決して侮れないというわけです。

当院に来られる患者様の多くは、何らかの形で睡眠に問題を持っています。よくあるのが、十分なんだけど寝た気がしないという問題です。患者様ご本人は、睡眠不足という自覚がないこともあります。
しかし、これは立派な、睡眠不足です。


そして次に多いのが、寝付くのに時間がかかるまたは、途中で目が覚めるという問題です。寝付くのに時間がかかるのを『入眠困難』、途中で目が覚めるのを『中途覚醒』と言います。この場合、患者様は睡眠不足あるいは自律神経失調との自覚があります。

1.睡眠は量より質?

実は、こういうこともあります。「えっ、7時間くらいは寝ているのに睡眠不足?」
そうです。睡眠は時間だけでは計れません。ある程度の時間は必要ですが、その質が大切な要素なのです。いわゆる、眠りが浅い人というのは、決していい睡眠を取っているとは言えません。逆に深い眠りについている人は、いい睡眠を取っている可能性が高いでしょう。

2.睡眠のリズム

人は眠りにつくとほどなくして深い眠りに入ります。それが最初のノンレム睡眠です。次に約90分~120分で眠りが浅いレム睡眠が訪れます。
このように眠りについてから90分~120分の周期でノンレム睡眠とレム睡眠のリズムが繰り返されるのです。よく睡眠時間は90分の倍数がいいと言われますが、これがその理由です。(90分という説と、120分の場合もあるという説があります。)

グラフを見ると、一番最初に訪れるノンレム睡眠が一番深いですよね。←ここ覚えておいてください。
もし、ノンレム睡眠の時に目が覚める状況(目覚ましが鳴るなど)になると、寝起きはスッキリしません。
逆にレム睡眠の時に目が覚めると、比較的スッキリと起きられるわけです。

3.睡眠は量より質?

睡眠は時間を確保するのも大切ですが、同じようにを確保することも大切なのです。「何時間寝ても眠い。昼まで寝ても寝足りない。」という人、いますよね? 

時間を確保できても質が悪い、すなわち深い眠りを得られていないと何時間寝ても眠いということになりかねないのです。もちろん、それだと頑張って起きて仕事に行っても、スポーツをしても、決して良いパフォーマンスを発揮することはできません。
逆にいい睡眠の質を得ることが出来れば、少々短い時間でも起きてから良いパフォーマンスを発揮できるのです。

<おまけ>
たまに、毎日6時間未満の短時間睡眠でも大丈夫な人っていますよね。実は短時間睡眠の遺伝子が発見され、2009年に学術誌「Sience」に発表されています。短時間睡眠は遺伝だったのですね。

 

4.最も大切なのは・・・

さあ、睡眠は時間だけでなく、質が大切だということが分かりましたね。
ひと晩の睡眠をしっかりと本来の目的を果たすために大切なことがあるのです。それが最初の90分を以下に眠るかなのです。つまり、入眠してほどなくして訪れる一番深いノンレム睡眠ということですね。
書籍「スタンフォード式最高の睡眠」では、これを黄金の90分としています。

最初が良ければ全て良し。しかし、最初の90分をしくじると、後の時間でそれを取り戻すことは不可能なのです。←これ重要。

 

5.最初の90分のメリット

最初の90分をしっかり深いノンレム睡眠で過ごすことが出来ると、体の中では次のような具体的なありがたい反応が起きます。

その1:寝ているだけで自律神経が整う
深い眠りに入るということすなわち、交感神経の緊張が緩み、同時に副交感神経が優位になります。この時に、脳も体もリラックスできるようになります。自律神経は呼吸や体温調節、心臓、血圧、胃腸の働きなどを自動的にコントロールする働きを持っています。

逆に自律神経が乱れれば、前述の様々なコントロールが失われることで頭痛、ストレス、疲労感、肩こり、イライラ、冷え性、体が重い、だるいなどが起こりえます。

しっかり睡眠を特に最初の90分をしっかり深く眠れるから自律神経が整うのか、または自律神経が整っているからしっかり睡眠をとれるのかは、まるでニワトリか卵のような話ですが、大きく関わり合っていることは確かです。

その2:グロースホルモン(成長ホルモン)が分泌する。
私たちはサーカディアンリズムという、地球の自転に合わせて24時間で1週する固有の体内時計を持っています。
多くのホルモン分泌がこの影響下にあると言われています。

グロースホルモンの場合、このサーカディアンリズムとともに圧倒的にノンレム睡眠の質に影響されます。最初のノンレム睡眠の時に70~80%が分泌され、さらにいつもは眠っている時間に起きていると全く分泌されません。

しっかりとグロースホルモンを分泌させるためには、毎日できるだけ夜11時前に、遅くても12時には就寝することです。(お子様には22時までには就寝させることを推奨します。)



グロースホルモンというと子供の成長に関わっていることも大切な事実ですが、大人であっても新陳代謝の促進、細胞の成長、皮膚の柔軟性アップ、アンチエイジングなどに関わっているので、決してないがしろにはできませんね。

その3:脳のコンディションが良くなる
睡眠にはノンレム睡眠だけでなく、レム睡眠とのリズムが大切です。
例えば、うつ病の人には最初の深いノンレム睡眠が十分ではなくレム睡眠が早くに出現します。日中何度も眠ってしますナルコレプシーの人は、入眠とともにレム睡眠が出現します。

そういった患者の多いことから、最初のノンレム睡眠が脳のコンディションを整えると言われています。

 

さあ、最初が肝心と分かったら、次の3章では良い睡眠をとるためのお話をしたいと思います。

第3章 体温と脳が睡眠を決める